次世代DVD戦争の読み方

いよいよ次世代DVD争いが白熱してきました。裏話含め、この戦争の読み方を紹介します。
(次世代ディスクって何?という方はブルーレイディスクとHD DVDとは?からご覧ください)

ポイント1■かつての敵・味方が一変〜松下電器が宿敵ソニーと手を組んだ

次世代DVD戦争の興味深いところは、DVDやSDカードメモリーなど、かつて「盟友」として戦った「東芝・松下電器・日立製作所」の3社連合が崩れたことです。しかもこともあろうに、松下電器はベータ・VHS戦争時代からの宿敵・ソニーと手を組みました。

図解・チーム表
Blu-ray Disk HD DVD
ソニー・フィリップス・松下電器産業・日立製作所・シャープ・パイオニア・サムソン電子・LG電子(韓国)・DELL・HPほか 東芝、NEC、メモリーテック(ディスク生産会社)、DVDフォーラム(約200社からなる団体)、マイクロソフト(?)、三洋電機

ブルーレイ・ディスクにおいて、DVDの盟主である東芝の不在は、衝撃的でした。
東芝は、DVDの規格を策定する国際団体「DVDフォーラム」の幹事会社。ブルーレイディスクの発表会でも、「なぜ東芝が入っていないのか」という質問が飛び出しました。

 もっともこれには裏話があり、ブルーレイ・ディスク側は発表ぎりぎりまで、何度も東芝を誘っていました。発表会前日の日経新聞には「東芝を含む10社が新規格」とリークされたほどです。
 しかし「次世代ディスクについてはDVDフォーラムで決めるべき」と考えていた東芝は誘いに応じず、交渉は決裂してしまいました。

ポイント2■なぜ東芝とNECが組んだのか

一社で孤立し、いったいどうするのかと思われていた東芝。
 ブルーレイディスク発表の年、独自に同様の研究をしていたNECと一緒になって次世代ディスクを開発すると発表しました。
これが、後の「AOD(HD DVD)」です。

 HD DVDはブルーレイより容量が少ないのですが、現行のDVDに似ているのが売り。設備もある程度使えるため、コストが安くでき、簡単に製造できるというのです

 ちなみに、ソニーは、ブルーレイディスクもCD-ROMの設備が使えるので安くできると反論しています。

 その後、HD DVDはDVDの規格を作っている業界団体「DVDフォーラム」に提案され、ついに2003年にROM規格が認められました。

 しかしながら、DVDフォーラムの主要ポストはブルーレイ・ディスクのメンバーが占めており、過半数の承認を得るためにいろいろと苦労をしたようです。

・DVDフォーラムに認められDVDフォーラム規格となると、世界200社あまりの会社がこの規格にのっとった製品を作れるようになります。

ポイント3■マイクロソフト・デル・hpの思惑

 家電業界主導でのDVD争いですが、「次世代ディスクでおいしい思いをしたい」のはIT業界も同じです。

 気になるのが、マイクロソフトの動きです。同社は自社の圧縮コーデック(WM9)をHD DVDに採用してもらい、ライセンス料をもらおうと(?)画策。昨年あたりから、積極的にHD DVD側に働きかけた結果、同社のコーデックを採用させることに成功しました。(実際にはライバル規格であるMPEG4 H.264と両方採用になりました)。

 ただ、家電業界にはマイクロソフトに対する根強い不信感があります。さらに同社が裏でブルーレイディスク陣営に働きかけている可能性もあり、目が離せません。

 デルとHPは以前、かつてDVDフォーラムで否決されたはずのDVD+R/+RWを自社のパソコンに搭載することでシェア拡大に貢献し、ライセンス料を儲けたと見られています。この2社は2004年1月にブルーレイ組に入りましたが、果たして同様のことが次世代ディスクでおきるのでしょうか。

ポイント4■みなが戦線恐々・・・中国の動き

 CDやDVDは世界規格ですが、ここで1つ、まったく違うことを考えている国があります。中国です。

 中国はDVDやCDのライセンス料を払いたくないという理由から、国独自の規格を策定しています。これが「EVD」とか「FVD」とか言われるものです。中身はブルーレイ・ディスクやHD DVDとそっくりなのですが、中国独自の規格として中国国内で争っており、実際には台湾が技術を提供し規格を作って、中国と一緒になって進めているという話もあります。
 2004年1月のInternational CESでは「EVD」のプレイヤーをいくつかの企業が展示しましたが、実際には価格が高いためほとんど売れていないようです。

 ハリウッドが中国に映画コンテンツを売るかどうかはなぞですが、したたかな国だけに、どの会社も見守るしかないという姿勢のようです。

ポイント5■争いのかぎを握るのはハリウッド映画産業

さて、この戦争、果たしてどちらが有利なのでしょうか。

答えの鍵を握るのはハリウッドです

現行のDVDが成功したのは、東芝がワーナーと協力し、良い映画ソフトをどんどん出したからだといわれています。そのため、両陣営ともハリウッド詣でをし、映像の評価会などで規格をアピールしています。

最近の報道によれば、ハリウッドは2つに割れているようです。

ソニー参加のソニー・ピクチャーズは当然、ブルーレイ支持をいち早く公言しています。MGMもソニーが買収しており、ブルーレイ支持を決めています。

反対にワーナー・ブラザーズ、パラマウント、ユニバーサル、ニューラインシネマはHD DVDを支持。
なお、日本では2004年夏にポニーキャニオンがHD DVD規格で自社のコンテンツを出すと発表しています。

意外だったのがディズニーが最近(2004年末)になって、ブルーレイ・ディスク支持を打ち出したことです。同社はDVDフォーラムの幹事メンバーでもあり、HD DVD支持に回るかと思っていた私にとって、このニュースは意外でした。

ただし、以前のVHSやベータ、CDのように、規格戦争に勝ったメーカーが莫大な利益を得られるかというと微妙です。ある関係者によれば、現在は特許をお互いに持ち合うクロスライセンス契約が多く、規格を1社だけの特許で作ることは困難になっているから、だそうです。

また、再生規格はHDDVD、書き込み規格はBDと、両者がそれぞれすみ分ける可能性もまったく無いとは言い切れません。

ポイント6■両方普及しない可能性もある!?


 次世代DVDの売りは何よりも「ハイビジョン時代にふさわしい画質」です。

ということは。
つまり、ハイビジョン(HD)が普及しなければ、次世代DVDも普及しない可能性があります

気になるのは、今まで「画質がいい」「音質がいい」というクオリティーで勝負してきた規格が、あまり大衆に受け入れられてきていないこと。ベータにしても然り、DVDオーディオ・SACDにしても然り。普及しませんでした。

ただし、日本などでは政府主導の形で無理やりテレビのハイビジョン化を進めている背景があるため、ハイビジョン用の映像コンテンツは絶対に必要だと見る向きもあります。

ポイント7■次々世代ディスクの研究も始まっている


ということで、いずれにしても普及のめどは先になりそうです。

 一方ではTB(テラバイト=1000GB)を目指す次々世代ディスクの研究もすでに始まっています。
 有名なのが、ソニー出身者によるベンチャー企業「オプトウェア」をはじめ、世界の各社が研究中の「ホログラム」という技術でしょう。体積記録という方法を使って、今までよりもたくさんの情報をディスクに書き込むものです。まだ超えるべきハードルは多いのですが、注目されています。
 日立製作所の「電圧層選択式多層化技術」も未完成ながら面白いです。現行のブルーレイは4層100GBまでに対応できるといっていますが、日立の多層化技術を使うと、なんと原理的には100層まで可能になるといいます。

このほかにも各社がたくさんの技術を開発しており、次世代ディスクの本命が、突然現れないとも言い切れません。いずれにしても、しばらくは現行のDVDの天下が続きそうです。

(終わり)

・このページは2004年12月に執筆したものです。すぐに情報が古くなるのでお気をつけてください。
・間違いなど発見した関係者の方は直接メールください。
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